財務分析 / 経営指標

銀行目線の財務分析を、
経営者自身の武器に。

経営健診の格付け診断の考え方と、中小企業経営者・専門家が知っておくべき財務指標を体系的に解説します。自社の財務がどう評価されているかを知ることが、融資交渉の第一歩です。

格付けシステムの概要 30以上の財務指標 計算式と目安値 銀行目線での解説 公的機関データへのリンク
このページの内容
01 / 診断の考え方

財務データから格付けへ、
6ステップで評価

経営健診の格付け診断は、銀行が行う内部格付けの考え方を参考に設計した独自の定量評価システムです。決算書をアップロードするだけで、以下のプロセスを自動で実行します。

STEP 1
財務データ入力
BS・PL・CF
OCRまたは手入力
STEP 2
強制ルール判定
債務超過・連続赤字
などの即時判定
STEP 3
定量スコア算出
6指標×重み付け
100点満点
STEP 4
財務トレンド評価
3期以上で自動発動
最大 +10点/−15点
STEP 5
定性評価補正
10項目・手動入力
実効±20点
STEP 6
格付け確定
G1〜G8の8区分
銀行格付けと対照
定量評価
財務数値による客観評価

自己資本比率・債務償還年数・流動比率など6つの財務指標を数値化し、重み付けスコアで評価します。決算書さえあれば、誰でも同じ基準で算出できます。

定性評価
数値に表れない要素を補正

経営者の資質・事業計画の有無・主要取引先の安定性など、財務諸表だけでは見えない要素を10項目で評価。専門家が入力することで精度が上がります。

財務トレンド評価
1期だけでは、会社は測れない

銀行は単年度の決算だけで格付けを決めません。増収か減収か、黒字が続いているか、自己資本が積み上がっているか——推移そのものが評価の対象です。単年度では同じ数字でも、そこに至る道筋が上り坂か下り坂かで、信用力の見方は変わります。

経営健診でも、3期以上の財務データを入力すると、財務トレンドの評価が自動で反映されます(最大 +10点/最小 −15点)。評価する観点は次の5つです。

  • 売上高の推移(連続増収・連続減収・減収への転落)
  • 経常利益の推移(黒字の継続・赤字の継続・赤字転落・黒字回復)
  • 純資産の推移(内部留保の蓄積・自己資本の毀損)
  • 借入と収益性の組み合わせ(借入増加と収益悪化の同時発生など)
  • 自己資本比率の推移

横ばい(前年並み)は補正ゼロです。「増えていない=減っている」とは判定しません。また、わずかな変動をトレンドと見なさないよう、指標ごとに不感帯を設けています。

3期未満の入力では、財務トレンド評価は発動しません。 1期のみの入力でも格付けは算出されますが、推移が反映されないぶん、実態から離れる場合があります。より実態に近い格付けのため、可能な限り3期以上の入力を推奨します
重要な前提:本システムは銀行内部格付けの考え方を参考とした独自の定量評価であり、特定の金融機関の格付け制度に準拠するものではありません。実際の銀行の債務者格付けには、業界動向・経営者の資質・将来の事業計画などの定性要因も加わります。なお担保・保証は債権の保全(融資の可否・条件)に関わる要因であり、債務者の信用力そのものを測る格付けには影響しません。本スコアはあくまで財務面の参考値としてご活用ください。
02 / 格付け区分

G1〜G8、8段階の格付け

銀行の内部格付けでは一般的に「正常先・要注意先・破綻懸念先」などに分類されます。経営健診ではこれをG1〜G8の8段階で表示し、自社がどの水準にあるかを直感的に把握できるようにしています。

格付け スコア目安 銀行分類(参考) 融資姿勢の目安 主な特徴
G1 88点〜 正常先(最上位) 積極融資 財務内容が極めて良好。優遇金利での融資が期待できる
G2 75〜87点 正常先(上位) 積極融資 財務内容が良好。通常条件での融資に問題なし
G3 62〜74点 正常先(中位) 通常対応 中小企業の標準的な水準。改善余地はあるが融資は可能
G4 50〜61点 正常先(下位) 条件付き 一部に懸念あり。担保・保証人を求められる場合がある
G5 38〜49点 要注意先 慎重 財務内容に問題あり。返済条件の見直しが必要な場合も
G6 26〜37点 要注意先(返済懸念) 原則困難 返済が滞るリスクあり。専門家への相談を推奨
G7 1〜25点 要注意先(深刻) 困難 事業継続に重大なリスク。早急な経営改善が必要
G8 0点 破綻懸念先〜実質破綻先 不可 強制ルール(債務超過等)に該当。抜本的な対応が必要
G8は通常スコアリングの最下位区分(スコア0点)です。これとは別に、債務超過(純資産マイナス)の場合はスコアに関わらず強制的にG8、深刻な赤字と長期過剰債務が重なる場合はG7が直接適用されます。銀行内部格付けは一般に15段階制(1が最上位・数字が小さいほど良好)で、G1〜G8はこれを参考に8区分へ集約した対応表示です。実際の分類は各金融機関の基準によります。
企業規模による上限(規模シーリング)と、要注意先の判定

銀行は、財務指標がどれだけ良好でも、企業規模(純資産・売上)が小さい先には上位格付けを付けにくいのが実務です。経営健診もこれを反映し、財務指標そのもののスコアとは別に、企業規模による「到達可能な上限」を設けています。たとえば財務指標が最上位(G1水準)の小規模企業でも、銀行の実務目線では正常先の下位(G4)が上限となります。

ただし規模が小さいというだけで要注意先(G5以下)に落とすことはしません。要注意先への区分は、延滞・返済条件の緩和(リスケ)・赤字の継続など、客観的な信用事由がある場合に限ります。企業規模は「到達できる上限」、客観的な信用事由は「下限」として、正常先と要注意先の境界を判定しています。

03 / 財務指標ガイド

銀行が見る財務指標、
30の解説

以下の指標は、銀行が融資審査で重視する代表的な財務指標です。計算式・目安値・銀行目線での意味を解説しています。なお、経営健診の格付けスコア算出に直接使用するのは主要6指標です。それ以外は財務状況の理解を深めるための参考指標として掲載しています。「銀行目線スコア影響度」は格付けスコアへの影響度の目安です(高いほど格付けに大きく影響します)。

安全性指標 ― 財務の健全性・返済能力
自己資本比率
純資産 ÷ 総資産 × 100(%)

企業の財務的な安定性を示す最重要指標。自己資本が多いほど借入への依存度が低く、倒産リスクが小さい。

目安:30%以上が優良、20%以上が標準、10%未満は要注意
銀行目線スコア影響度
格付けスコアへの影響:非常に高い
債務償還年数
有利子負債 ÷ (営業利益 + 減価償却費)(年)

借入金を利益とキャッシュで返済し終えるまでの年数。銀行が融資可否を判断する際の最重要指標のひとつ。

目安:10年以内が正常、15年超は要注意、20年超は危険水域
銀行目線スコア影響度
格付けスコアへの影響:非常に高い
流動比率
流動資産 ÷ 流動負債 × 100(%)

1年以内に返済が必要な負債に対し、1年以内に換金できる資産がどれだけあるかを示す。短期の支払い能力の指標。

目安:120%以上が安全、100%未満は短期的な資金繰りリスクあり
銀行目線スコア影響度
格付けスコアへの影響:高い
当座比率
(現金 + 預金 + 受取手形 + 売掛金) ÷ 流動負債 × 100(%)

流動比率より厳格な短期支払い能力の指標。棚卸資産を除くため、在庫の換金性が低い業種では特に重要。

目安:100%以上が理想的
銀行目線スコア影響度
格付けスコアへの影響:中程度
固定比率
固定資産 ÷ 自己資本 × 100(%)

長期にわたって使用する固定資産が、返済不要の自己資本でどれだけ賄われているかを示す。100%以下が理想。

目安:100%以下が優良、150%超は要注意
銀行目線スコア影響度
格付けスコアへの影響:中程度
インタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)
(営業利益 + 受取利息)÷ 支払利息

営業活動で稼いだ利益が、支払利息の何倍あるかを示す。1倍を割ると利息すら払えない状態。

目安:3倍以上が安全、1倍未満は深刻
経営健診では:格付けスコアには、これに減価償却費を加えたCF-ICR((簡易CF+支払利息)÷支払利息、簡易CF=経常利益+減価償却費)を使用します。減価償却費は現金支出を伴わないため、実際の利息支払能力はキャッシュフローで見るのが実務的だからです。ICRは参考表示です。
銀行目線スコア影響度
格付けスコアへの影響:高い
収益性指標 ― 稼ぐ力
売上高営業利益率
営業利益 ÷ 売上高 × 100(%)

本業でどれだけ効率よく利益を生み出せているかを示す。業種によって適正値が大きく異なる。

目安:製造業5%以上、小売業2%以上、サービス業10%以上が目安
銀行目線スコア影響度
格付けスコアへの影響:高い
ROA(総資産利益率)
経常利益 ÷ 総資産 × 100(%)

企業が保有する全資産をどれだけ効率よく活用して利益を生み出しているかを示す総合的な収益性指標。

目安:3%以上が良好、5%以上が優秀
経営健診では:格付けスコアにはCFマージン(簡易CF÷売上高)を使用します。ROAは総資産の重い業種(製造・不動産)で不利に出るため、業種による有利不利が小さいキャッシュフロー基準を採用しています。ROAは参考表示です。
銀行目線スコア影響度
格付けスコアへの影響:高い
ROE(自己資本利益率)
当期純利益 ÷ 自己資本 × 100(%)

株主が出資したお金をどれだけ効率よく使って利益を上げているかを示す。投資家・金融機関が重視する指標。

目安:10%以上が目標値、日本企業平均は約8%
銀行目線スコア影響度
格付けスコアへの影響:中程度
EBITDA
営業利益 + 減価償却費(円)

償却前利益とも呼ばれ、実際のキャッシュ創出能力を示す。設備投資の多い業種や、M&Aの企業価値評価でも使われる。

活用例:有利子負債÷EBITDAが債務償還能力の目安(5倍以下が目安)
銀行目線スコア影響度
格付けスコアへの影響:中〜高
キャッシュフロー指標 ― 現金の動き
営業キャッシュフロー
本業から生み出された現金収支(CF計算書より)

本業で実際にどれだけ現金を稼いでいるかを示す。利益が出ていても営業CFがマイナスなら資金繰りが危ない。

目安:継続的にプラスであることが重要
銀行目線スコア影響度
格付けスコアへの影響:非常に高い
フリーキャッシュフロー
営業キャッシュフロー − 設備投資額(円)

設備投資後に自由に使える現金。借入返済・配当・内部留保の源泉となる。銀行はここから返済原資を判断する。

目安:プラスが理想。マイナスが続く場合は投資内容を精査
銀行目線スコア影響度
格付けスコアへの影響:非常に高い
CF利益率
営業キャッシュフロー ÷ 売上高 × 100(%)

売上に対して実際にどれだけ現金が残るかを示す。利益率より実態を反映しているとも言われる。

目安:5%以上が良好
銀行目線スコア影響度
格付けスコアへの影響:中程度
効率性指標 ― 資産の回転と運転資本
総資産回転率
売上高 ÷ 総資産(回)

保有資産をどれだけ効率よく売上に転換しているかを示す。業種によって大きく異なる。

目安:小売業1.5回以上、製造業0.8回以上、サービス業1.0回以上
銀行目線スコア影響度
格付けスコアへの影響:低〜中
売掛金回転日数
売掛金 ÷ 売上高 × 365(日)

売上が発生してから現金回収されるまでの平均日数。日数が長いほど資金繰りが厳しくなる。

目安:60日以内が目標。90日超は要注意
銀行目線スコア影響度
格付けスコアへの影響:中程度
棚卸資産回転日数
棚卸資産 ÷ 売上原価 × 365(日)

在庫が売れるまでの平均日数。日数が長いほど在庫が滞留しており、不良在庫リスクが高い。

目安:業種によって異なる。前期比での悪化に注意
銀行目線スコア影響度
格付けスコアへの影響:低〜中
実態BS補正 ― 財務諸表の実態把握
不良資産の控除
実態純資産 = 帳簿純資産 − 不良資産

回収不能な売掛金・使用実態のない固定資産・実質的な損失を純資産から差し引いた実態値。銀行は帳簿ではなく実態で判断する。

主な対象:不良売掛金・不良在庫・遊休資産・繰延資産
銀行目線スコア影響度
格付けスコアへの影響:非常に高い
役員貸付金の問題
役員への貸付金 → 実態上は純資産のマイナスとして扱う

役員への貸付金は回収可能性が低いとして、銀行は実態BSの作成時に純資産から差し引く場合が多い。

注意:高額の役員貸付金は格付けに大きな悪影響を与える
銀行目線スコア影響度
格付けスコアへの影響:非常に高い
含み損益の反映
実態純資産 = 帳簿純資産 ± 含み損益

不動産・株式・保険積立金などに含み益・含み損がある場合、実態BSに反映する。含み益があれば格付けが上がる可能性もある。

対象:不動産・有価証券・生命保険解約返戻金
銀行目線スコア影響度
格付けスコアへの影響:高い
04 / 業種別ベンチマーク

業種別の財務指標
中央値一覧

自社の財務指標が業界内でどの水準にあるかを知ることが、改善の第一歩です。以下は日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」をベースとした業種別中央値です。経営健診の「業種別比較」機能でも同データを参照しています。

指標 建設業製造業飲食業 小売業医療・福祉IT・情報その他
営業利益率(%)3.22.84.12.46.27.14.8
経常利益率(%)2.11.92.81.64.14.83.2
自己資本比率(%)28.432.118.624.834.238.628.2
流動比率(%)134.5148.398.7118.7138.9156.4125.6
当座比率(%)98.2108.472.162.4118.2142.898.4
債務償還年数(年)12.110.89.411.28.26.810.4
ICR(倍)3.23.84.12.95.88.24.2
CF率(%)5.85.28.64.89.410.27.8
総資本回転率(回)1.421.281.892.141.121.081.32
売上債権回転日数(日)68581228425248
出典:日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」をベースに設定。業種・規模・調査年度によって数値は異なります。経営健診の格付け診断では、自社の各指標が業種内の上位25%・中央値・下位25%のどの位置にあるかを表示します。
05 / 融資可能性の考え方

格付けと融資の
関係を知る

格付けは融資可否を決定するものではありませんが、金融機関の融資姿勢に大きく影響します。自社の格付け水準と融資手段の関係を理解することで、資金調達の戦略を立てやすくなります。

プロパー融資(保証なし)
信用保証協会を使わず、銀行が直接リスクを取る融資。財務内容の良い企業が対象。G1〜G3は積極推進、G4は審査可能(慎重審査となり担保・保証や短期化を求められる場合がある)。
目安:G1〜G3(積極) / G4(審査可能)
信用保証付き融資
信用保証協会が保証することで、財務内容が弱い企業も融資を受けやすくなる。中小企業の主要な資金調達手段。G1〜G4は積極推進、G5・G6も審査可能
目安:G1〜G4(積極) / G5〜G6(審査可能)
日本政策金融公庫
政府系金融機関のため、民間銀行より柔軟な対応が期待できる。G1〜G5は積極推進、G6も審査可能。債務超過でなければ相談可能な場合が多い。
目安:G1〜G5(積極) / G6(審査可能)
上記の目安は、経営健診の診断画面に表示される「融資可能性・借入余力」と同じ基準です。 判定は企業規模を考慮した格付け(銀行格付相当)に基づきます。◎積極推進/○審査可能/△慎重審査/×困難 の4段階のうち、上記は◎と○の範囲を示しています。 実際の可否は各金融機関の判断・案件内容・担保や保証の有無・経営改善計画等により異なります。
返済余力ベースの借入上限(参考計算式)
「債務償還年数10年以内」を維持できる理論上の借入上限の目安です。実際の融資可否・融資額とは異なります。
返済余力上限 = キャッシュフロー × 10 − 現在の有利子負債
(債務償還年数10年以内を維持できる理論上の上限値)

例)CF = 500万円、有利子負債 = 3,000万円 の場合
  500 × 10 − 3,000 = 2,000万円 が返済余力上の目安
※実際の融資可否・融資額は、設備資金か運転資金か、返済期間・金利・担保・保証の有無、売上の安定性・将来予測、金融機関との取引関係等によって大きく異なります。この計算式はあくまで財務上の参考値です。詳細な借入計画は必ず金融機関または専門家にご相談ください。
06 / 参考・公的機関データ

信頼できる公的データを
経営に活用する

財務分析には業種別の平均値との比較が欠かせません。以下の公的機関が無料で公開しているデータを活用することで、自社の立ち位置をより正確に把握できます。

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